2009年10月02日

戦場追想

戦場の奥の奥に。それはいた。

禍々しい黒い、「尾」。
集められたゴースト達を、怨念と怨嗟を背負って、少女が哂う。

今までも強力なゴーストだとか、来訪者だとか。
そんな存在を目の当たりにしたことはある。
…でも、あれは何かが違う。
余りにも強大すぎるとか、…そういうことじゃなくて。

─あれは、やばい。
あのままの彼女と…戦うのは危険すぎると。
そう、感じた。

─でもそれを、そのままにしておけるわけなどない。
戦うのは危険過ぎる。でも、倒さなければ、止められない。

一歩遅れた俺の目の前。
武曲に対峙する、能力者達─その中には、見慣れた小柄な、彼女の姿─

「藍那!─邪魔だ、てめえ!」

立ちはだかった妖狐へ肉薄して、クレセントファングを放つ。
ぐっと身を屈めて放った蹴りは、三日月の弧を描いて妖狐の急所をとらえた。
崩れ落ちるそれを振り切って、先行く藍那を追うように足を踏み出す─

「…、!」

視界にちらついた、怪しげに揺らめく炎。
拙い、と思ったときにはその妖力に捕らわれて。

「ちっ…面倒臭えな!」
味方の齎す赦しの力の助けを借りて呪縛を振り切り、前を向き直る─

─そこに、ソレが、いた。
 
 
戦場追想─続
posted by 月代真澄 at 04:28| Comment(0) | SS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年07月13日

望みたい明日の道へ

インターホンを誰かが押した。

同居人は今は誰も居ない。
恐らくは夕陽の結社か、雪姫の部屋か。そのあたり。
帰ってきたのだろうかとも思うが、それはない。
他人行儀にインターホンなんて押さなくて良いぞ、と言ってある。

宗教勧誘だとか新聞の勧誘だとかはたまに来る。
が、今は深夜1時、そういう輩もこんな時間に出歩きはすまい。

ひとつだけ覚えがあるのだった。
こんな時間に失礼にも人の家を訪ねてくる人間。
面倒だから関わらない。大抵は居留守か寝た振りで通す。

が。
視界の隅に転がっている大きな茶封筒。
…あれの話だろう。
面倒だがそれならば、通さないわけにはいかない。
 
 
望みたい明日の道へ
posted by 月代真澄 at 04:23| Comment(0) | SS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年05月30日

相似、然る故に

最後のゴーストが、怨念めいたうめきを上げながら消えていく。
私の前にいる男─まあ、要するに今しがたあれを葬った人間だが─は、しばし張り詰めた様相で周囲を窺っていたが、
やがてそれ以上敵の気配が感じられない事を悟ると、息を吐いて構えを緩めた。

「…片付いたな。真澄さん、先に─」
「蒼刃、お前とは一度決着をつけないとならないな」

男─霜月・蒼刃は、私に声をかけようと振り返りかけたそのままの姿勢で、しばし硬直した。
 
 
相似、然る故に
posted by 月代真澄 at 02:42| Comment(0) | SS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年05月06日

月代、という家

「真澄様」

低く落ち着いた若い声。

「御屋敷に顔を見せるようにと、御当主が仰られております。
家族の者も皆心配しておりますゆえに」

淡々と音を紡いでいく。

「今晩、いえせめて週末でも、一度…」

余所余所しい語り口には慣れても、未だに其れは。

「うるせーよ。少し黙れ、真央」

吐き捨てるように遮った。
息を呑んだような音が、受話器越しに耳に届く。
次いで聞えた申し訳御座いませんの言葉に、眉を寄せて奥歯を噛んだ。

ああ、未だに其れは。
私には、苦すぎる。
 
 
 
月代、という家
posted by 月代真澄 at 12:15| Comment(0) | SS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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